ジェイコム男 B・N・F さんに対する誤解

ジェイコム男 B・N・F さんに対する誤解

「日経金融新聞」2005 年 12 月 21 日付に、編集委員の前田 昌孝さんのコラムが掲載されており、2 つの疑問を提示していました。

  1. どうやって買ったのだろう
  2. よく買う決断ができた

どうやって買ったのだろう

「どうやって買ったのだろう」(取引所関係者)。
これが第一の驚きだ。
オンライン証券ならば一般に一銘柄当たりの発注上限がある。
現物買いならば二十億円、信用買いならば十億円までが相場のようだ。

複数のオンライン証券に巨額の待機資金があったのならば、現物買いは可能だが、三十四億円も置いておくのだろうか。
かといってわずか数分のうちに複数の証券会社で他の株式を売却して巨額の資金を作り、買ったというのも非現実的だ。

株式が担保として大量に入っていれば一般信用を利用して買うこともできる。
ただ、発注上限があるから、四社以上で買ったことになる。
「上得意客に限定し、特別に発注上限を外している証券会社があるかもしれない」(ハンズオンクリエイトの元久存社長)。

対面販売の証券会社ならば、機械的な発注上限はない。
十分な株券担保が入っていれば、一般信用を使って三十四億円でも買えるようだ。
対面販売の証券会社での現物買いならば三十四億円分を買ってしまった後で他銘柄を売却し、購入代金を作ることも可能。

しかし、中堅証券幹部は「電話でそんな注文を受ける証券会社があるだろうか」と不思議がる。

記事を読むまで知りませんでしたが、一銘柄当たりの発注上限があるのですね。

当時 B・N・F さんの資金は 80 億円前後なので、記事中にある通り、証券会社が発注上限を外している可能性は十分あります。

しかし、発注上限を外していなければ、B・N・F さんは現物買いだから発注上限は 20 億円のままかもしれません。

実際は、楽天証券で 2950 株と他 2 社合計で 4150 株を購入しており、株価を 60 万円としても、1 社当たりの現物買いの発注上限である 20 億円を下回ります。

この文章で前田さんが誤解しているのは、「三十四億円も置いておくのだろうか」の部分です。

B・N・F さんは、34 億円どころか当時で 80 億円、2006 年 4 月には 130 億円を置いているのです。

普段、鋭い記事を書いている前田さんですが、数十億円の資金でデイトレードやスイングトレードをしている個人投資家がいるとは思わなかったようです。

ちなみに、「日刊スポーツ」2005 年 12 月 18 日付は B・N・F さんへのインタビューこそないものの、「現在は 34 億円をはるかに超える巨額マネーを有しているとみられる」「現在の資金総額は明言しなかったが、34 億円の倍以上はありそうな雰囲気だった」と報じています。

皮肉なことに、専門紙の「日経金融新聞」よりも娯楽紙の「日刊スポーツ」の方が正確な報道です。

よく買う決断ができた

「よく買う決断ができた」(大手証券幹部)。
これが第ニの驚きだ。
何しろ東証マザーズは元社長が逮捕されたり、上場直後に主力業務の免許が取り消されたりする企業が上場したこともある。
巨額の投資を回収できない恐れがある。

それでも自信を持って買ったのは、誤発注をしたみずほの社員と二十億円稼いだ二十七歳男性とが実は裏でつながっていたからではないかと考えたくなるほどだ。
もちろん何の根拠もない推察だが……。

B・N・F さんが確認したかは分かりませんが、板情報(左に売り注文/右に買い注文の株価と株数が表示される)を見れば、ジェイコムに不祥事があった訳ではないことが分かります。

「Diamond ZAi ダイヤモンド・ザイ」2006 年 3 月号には、9:34 時点のジェイコム株の板情報が掲載されていました。
57 万 2000 円(ストップ安)に 54 万 3225 株(発行済株式数 1 万 4500 株の 38 倍)もの売り注文が出ています。

ジェイコム株の板情報 (9:34)
売数量 気配値 買数量
55 580000  
50 579000  
5 578000  
5 575000  
543225 572000  

B・N・F さんはジェイコム株を 5 % 以上取得したため、大量保有報告書を提出して住所や氏名が公表されてしまいました。

一方、誤発注をしたみずほの社員に関する続報はほとんどありません。

この 2 人が共犯者というのはフィクションとしては面白いと思いますが、まずないでしょう。

ところで、2005 年 12 月 26 日発行の JMM [Japan Mail Media] には、三菱 UFJ 証券の三ツ谷 誠さんが以下の文章を寄せていました。

今回の事件に対する報道、分析、解釈の中で個人的にもっとも興味を覚えたのは、日経金融新聞紙上で日経の前田編集委員が、全く根拠のない話ではあるが、という断りのもとで展開した、本件で20億円を上回るキャピタルゲインを手に入れた千葉県市川市在住の27歳無職の青年と、誤発注を行ったみずほ証券の若いディーラーが実は裏側で結び付いていたのではないか、という『白昼の死角』!ばりの推論でした。

勿論それは推論に過ぎませんが、そうでも考えない限り1円で62万株を買うという初歩的な発注ミスを大証券に勤める有意の人材が起こすという落差に説明がつかないのと、年齢的に近い彼等が例えば六本木の会員制クラブでよく顔を合わせるメンバーであってもおかしくない(或いは大学のサークルの仲間であってもおかしくない)という「ブンガク的想像」に無理がない、という主に二つの理由からなかなか面白い視角の提示と私には感じられました。

文章数にして 2 つしかないのに、突っ込みどころ満載です。

まず、「1 円で 62 万株を買う」ではなく「1 円で 61 万株を売る」であり、こんな初歩的な認識ミスを大証券に勤める有意の人材が起こしているのだから、「初歩的な発注ミスを大証券に勤める有意の人材が起こすという落差に説明がつかない」こともないでしょう。

次に、この頃には「週刊新潮」2005 年 12 月 29 日号に、B・N・F さん本人のインタビューが掲載されていたのに、何がどう「『白昼の死角』!ばりの推論」「そうでも考えない限り」なのか全く分かりません。

下には下がいるものです。

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